結局人以外の何者かに自室を乗っ取られた僕は、いかでこの忌まわしき建物から脱出せんと1人暮らしすることにし、今必要なのは安心して暮らせる物件とて、少し高い家賃でも利便性から駅に近いワンルームマンションを契約しました、引っ越し当日はお隣に挨拶を済ませ、家具の配置から必要な物を買い足してやっと新しい環境に慣れてきたのがおよそ3週間、日中でも薄暗い部屋や浴室周辺に漂う僕以外の気配などに気づいたのもこのころからでした。
ある晩にYがきたときのこと、怪談話に花が咲いたのをきっかけに部屋の容子を訊いたところ、あの辺が気になるねと指さしたのが浴室周辺で、そういえばここに来る前に通った駐輪場も厭らしい雰囲気だったし、もっと云えば建物自体が面妖ぞかしとて訊くのではなかったと後悔しても後の祭り、これ以上酷くならぬうちに今度の物件を探すことにしました。